患者さんの日常生活について

HIVに感染したからといって昨日までできていたことができなくなるということはありません。
基本的な生活は以前と変える必要はありません。
ご自分で「健康によくないな」と思っていることがあれば変える努力をされた方が良いでしょう。
ここでは基本的な日常生活についてご紹介しますが、病状によって注意点も変わってきますので主治医や医療スタッフと相談しながらご自分に合った生活をおくることが大切です。

基本的な日常生活について

特別なことはありません。
健康を維持するために十分な栄養・休養をとるように心がけましょう。
ストレスをため込まないよう自分なりの気分転換の方法があることも大切です。
体調の変化に気を配り、気になる症状がある場合は主治医や医療スタッフに相談しましょう。

仕事・通学について

特に制限はありません。
HIVに感染したからといって仕事や学校をやめる必要はありません。
多くの方は仕事や学校に通いながら、病院への通院、治療を続けています。

食事について

バランス良くとることを心がけましょう。
免疫能が低下しているときは下痢や食中毒を起こしやすいので生もの(特に肉・魚貝類・卵など)は避け、加熱したものを食べるようにしましょう。
生野菜は十分に洗いましょう。また、調理する時、食事の時は必ず手を洗い清潔を心がけましょう。

運動について

特に制限はありません。
適度な運動は体力の維持だけでなく気分転換にもなり有効です。

生活習慣病の予防について

HIVに感染していること自体もしくは抗HIV薬の内服により、骨がもろくなったり脂質や糖代謝の異常を認めたりする場合があります。健康な人よりも生活習慣病にかかりやすくなるといわれています。
日頃から適度な運動を心がけ、ご自分にとってバランスの良い食生活を見つけること、煙草やアルコールは控えるなど意識することが大事です。体重の増減や血圧の変動など定期的にチェックして、生活習慣病の予防に心がけましょう。
今は大丈夫でも将来のために今からできることに取り組まれることをお勧めします。
具体的な方法等は医療スタッフに相談してみましょう。

ペットについて

ペットを飼うことに制限はありませんが、中には人間にも感染する病原体を持っている動物もいます。
(猫:トキソプラズマ ハト:クリプトコッカス 爬虫類:サルモネラなど)ペットの清潔を心がけ、特に糞の始末をした時などはしっかり手を洗いましょう。餌の口移しも避けましょう。

市販薬やサプリメントについて

抗HIV薬を内服している場合は治療効果に影響を与えるものもあります。
また、サプリメントの中にはどのような成分が入っているかわからないものもありますので使用については主治医や医療スタッフにご相談ください。

ドラッグについて

覚せい剤や危険ドラッグなどは作用機序が不明瞭であり体に悪影響を与えるだけではなく、通院や内服が不規則になったり、性行為が無防備になり予防行動がとれなくなることもあります。また、抗HIV薬を内服している場合は治療効果に影響を与えるものもありますのでドラッグの使用はしないでください。やめたいのにやめられないなど自分一人の力では難しいと感じる時は、医療スタッフにご相談ください。

旅行について

海外旅行に行く時は食事だけでなく、水にも注意しましょう。
生水は避けてペットボトルを購入しましょう。
抗HIV薬を内服している場合は、時差のため内服時間の調整が必要な場合もありますので主治医や医療スタッフに相談しましょう。

けがなどで出血した時

出血を伴うけがをした場合は傷の手当てはご自分で行うようにしましょう。
周囲の人にお願いする場合は手袋やビニール袋で手を覆ったり、タオルを使い直接傷口や血液に触れる事のないようにしましょう。
血液が付いたものはティッシュにくるんだり、ビニール袋の口をしっかり結んで捨てましょう。

性行為について

感染していても、性行為するときに注意を払った行為をすればパートナーへの感染は防げます。
性行為をする相手に感染させない・自分が他の感染症に感染しないようにするには、どのような行為で感染するのかを理解することが大切です。
また、安全な性行為についての相談ができます。最近では、HIV治療によりウイルスが検出できない状態を6か月以上維持できている場合には、性行為では相手へ感染しないことがわかっています。抗HIV薬の確実な内服を続けることも感染予防行動の1つです。

HIVの感染予防について

家族計画について

HIVに感染していても妊娠出産は可能です。
母親は抗HIV薬を内服しウイルス量をコントロールする、時期を選んで帝王切開する、子供に母乳を与えないなどいくつかの感染予防策をとることで子供への感染は約0.4%まで下げることができます。
その他にもパートナーの感染の可能性や、治療と育児の両立などさまざまなことをクリアしていかなければなりません。
男性がHIVに感染している場合でも子供を持つことは可能です。
これから子供がほしいと考えている方は生殖補助医療を受ける等の方法もありますので相手の方ともよく話し合い、早めに医療スタッフにご相談ください。

誰に伝えるかについて

HIVに感染している事実を、いつ誰に伝えるかということは、よく考えて決める方がいいでしょう。
性行為のパートナーに結果を伝えてHIV検査を勧める場合にも、伝え方は十分に考えるのが望ましいです。
周囲の人たちに対しても急いで伝える必要はないですし、なぜ伝えようと思うのか、どのように伝えると相手に伝わるか、など伝えることでのメリット・デメリットを良く考えて準備しましょう。
そのためにもまずはご自分の気持ちと知識の整理をつけられてからの方が良いでしょう。
一人で悩まずに、医療スタッフに相談してみましょう。

カウンセリングについて

HIVは慢性疾患です。病気との長い付き合いの中では病状の変化やライフスタイルの変化などその時々の状況によって気持も色々な方向に揺れ動くこともあるでしょう。
カウンセラーと話すことで気持ちの整理がつけやすくなるかもしれません。
受診されている病院に専門のカウンセラーがいない場合でも派遣カウンセラーを利用することもできますので、不安や悩み事等がある場合は主治医や医療スタッフに相談しましょう。

カウンセリングのご案内

医療費について

一定の条件を満たせば、身体障害者の認定を受けることができます。
認定を受けた場合、医療費の負担は大きく軽減されます。
申請に関するプライバシーのことなども含めて病院のソーシャルワーカーなどに相談することができます。
経済的な理由で受診を止めてしまう前に医療スタッフに相談しましょう。

医療費について

定期受診について

ご自分の免疫状態を知ることは大切なことです。
定期受診は適切な時期に適切な治療を受けることにつながります。
自覚症状がなくても定期受診しましょう。
仕事で受診が難しい場合など一人で悩まずに医療スタッフに相談しましょう。

パートナー・友人・家族がHIV感染している場合について

もしもあなたのパートナーや友人、家族がHIVに感染していても、今までどおりの関係でいてよいのです。
HIV感染は特別なことではありません。
気をつけてほしいことは、性行為時の感染予防と血液の取り扱いです。

相談する相手が必要な時は電話相談等の窓口を利用する方法もあります。
例)

  • 先日パートナーからHIV陽性と打ち明けられて、どうすればよいかわからない・・・
  • 本人の体調が思わしくない時、どう接したらよいかわからない・・・
  • パートナー・友人・家族がHIV陽性だと、自分ひとりでかかえなければいけないのか・・・

HIVマップ