HIVの感染予防について

HIVの感染経路

HIVは性行為以外の日常生活で感染する機会はまずありません。
主な感染経路は性行為による感染、血液による感染、母子感染の3つです。

HIV感染からエイズ発症まで

性行為による感染について

現在8割以上の人が性行為による感染です。
HIVの感染源となるものには血液、精液(先走り液も含む)、膣分泌液、母乳があります。
感染の可能性のあるこれらのHIVを含んだ体液が健康な皮膚に触れても感染はしませんが、粘膜や傷口に直接触れると感染の可能性が出てきます。

感染の可能性のある性行為の代表的な例をあげると、膣性交、アナルセックス、性器や肛門をなめる行為などです。
感染症予防には、性行為をしない(NO SEX)か、する場合はより安全な性行為(SAFER SEX)を守って行動することです。最近では、HIV治療によりウィルスが検出できない状態を6か月以上維持できている場合には、性行為では相手へ感染しないことがわかっています。抗HIV薬の確実な内服を続けることも感染予防行動の1つです。

より安全な性行為は、コンドームを正しく使用して、精液・膣分泌液・血液などが直接触れないようにすることです。
相手にHIV感染させないために、また、他の性感染症等から自分を守るためにも感染予防行動が必要です。

HIVと他の性感染症

一般的に性感染症に感染していると、HIVの感染率は数倍高くなるといわれています。
またHIV感染後に他の性感染症に罹患した場合、その性感染症が重症化したり、治るまでに時間がかかるといわれています。

性感染症について

HIVと薬剤耐性ウイルス

HIV感染後にタイプの違うHIVウイルスが体内に入った場合、HIVの治療の選択を狭める事もあります。(薬剤耐性ウイルスの獲得)お互いがHIVに感染している場合の性行為でも予防は必要です。

HIVと危険ドラッグなど

危険ドラッグなどを使用した性行為は気分が高揚し解放感が得られる人もいるようです。しかし危険ドラッグなどは判断力を弱め抑制が利かなくなり、いつもはできている感染予防行動の障害になりますので使用は避けましょう。

まずは話し合いから

自分自身とパートナーの安全のために、コンドームの使用など予防行動がとれるように、お互いに話し合うことから始めることも大切です。

コンドームの正しい使用について

気を付けたいポイント

  • コンドームは性行為の途中からではなく、最初から終わりまで装着します。射精の前後にでるカウパー腺液(先走り液)にもHIVが含まれています。
  • また、口を使った性行為の時もコンドームを使用しましょう。
  • コンドームを二重にすることは外れたり破けやすくなる原因にもなるのでやめましょう。
  • ゼリーや潤滑油を使うときは水溶性のものにしましょう。
  • 爪が伸びているとコンドームを扱う時に傷つけやすいので爪はきちんと切りましょう。

コンドーム保管方法の注意点

  • 使用期限が切れているものは品質の保証ができないので使用しないで下さい。
  • コンドームをお財布などに入れて携帯するとゴムに傷がつくことがありますので、ハードケースに入れましょう。
  • 高温になるところや、防虫剤のそばに置かないようにしましょう。

性感染症について

性行為などで感染する病気のことを性感染症と言います。
「STD(Sexually Transmitted Diseases)」や「STI(Sexually Transmitted Infection)」と呼ばれてます。
1回でも正確な予防をしないで性行為をすると、感染する可能性があるので、誰にでも起こりうる身近な病気です。感染しても症状がない人もいます。「自分だけは大丈夫」、「症状がないから大丈夫」と思っていると気がつかないうちに感染を広めたり、治療のタイミングを失ってしまうかもしれません。
性感染症は性器、口、肛門などから感染します。性感染症に感染している皮膚や粘膜は荒れているのでHIVに感染しやすい状態になっています。
気になる行為があったら検査を受けてみましょう。
また、治療するときはパートナーも一緒に治療しないと、せっかく自分が治っても、パートナーから再び感染してしまう(ピンポン感染)恐れがあります。
自分のことも、相手のことも、大事にしましょう。

おもな性感染症

代表的な性感染症は下記の通りです。このような性感染症にかかった際には、感染経路が同じHIVにも感染している可能性がありますので、HIVの検査を受けることをお勧めします。

性器クラジミア

症状 クラミジア・トラコマティスという病原体による感染です。日本で一番感染者が多い性感染症で、特に若い女性に増えています。治療しないと不妊の原因となることもあります。咽頭にも感染が多いです。
男性 感染して1~3週間で排尿時に痛みやかゆみを感じたりしますが、感染に気付かないことが多いです。
女性 あきらかな症状がなく、感染に気付かないことが多いです。
検査 男性 尿道からの分泌物や尿で調べます。
女性 膣、子宮頚管からの分泌物や血液で調べます。
治療 パートナーと一緒に抗生物質を1~10日間程内服します。

淋病

症状 淋菌による感染です。男性はうみが出るなどの症状が出やすいですが、女性は症状が出ないことが多いため気付きにくい病気です。咽頭や肛門からも感染します。
男性 黄色いうみや汁が出て、排尿時に激痛を感じ、尿道口が赤くなります。
女性 あきらかな症状がなく、感染に気付かないことが多いです。
検査 男性 尿道からの分泌物や尿で調べます。
女性 おりものや尿で調べます。
治療 抗生物質の注射や内服をします。勝手に薬をやめたりすると薬に対する抵抗性ができて薬が効かなくなるので、菌が検出されなくなるまで根気よく治療を続けます。

性器ヘルペス

症状 単純ヘルペスウイルスによる感染です。感染したとき無症状であっても、免疫力が低下したときに神経に潜伏していた単純ヘルペスウイルスが再活性化して発症することもあります。性器に痛みを伴う小さな水ぶくれができ、破れた水ぶくれの下に潰瘍ができます。
検査 視診で水ぶくれや潰瘍があるか確認します。水ぶくれの分泌物や血液で検査を行うこともあります。
治療 抗ウイルス薬を内服し、患部には抗ウイルス薬の軟膏(なんこう)を塗ります。

尖圭コンジローマ

症状 ヒトパピローマウイルスによる感染です。型によっては子宮頚癌、肛門癌を引き起こすこともあり、男女問わず増加しています。性器や肛門の周りに小さなイボができます。
検査 視診で確認できますが、確定診断は採取した組織を調べて判断します。
治療 手術でイボを切り除いたり、軟膏治療や液体窒素での冷凍治療などをします。

梅毒

症状 梅毒トレポネーマという病原体による感染です。約3週間の潜伏期間ののち性器や股の付け根に痛みのない硬いしこりができます。約3か月後に手のひらや全身に赤い発疹ができはじめます。
検査 血液検査でわかります。
治療 抗生物質の内服や注射をします。

B型肝炎

症状 B型肝炎ウイルスが血液を介して感染する病気です。急性肝炎になると、食欲不振やだるさを感じたり、尿が濃くなることがありますが、症状がないまま回復することも少なくありません。一部に、急性感染症後に重症化して劇症肝炎を起こす場合や、慢性化する場合があります。また、母子感染などが原因で、幼少期からウイルスが持続感染していることもあります。
検査 血液検査でわかります。
治療 性行為で感染した場合、無治療のまま急性肝炎として治療すると考えられてきましたが、最近、慢性化する例が増加傾向にあります。その場合には、抗ウイルス薬による治療を行います。